管状組織体(バイオチューブ)

世界最小径人工血管、リンパ管を開発

ラット動物実験において、内径0.6mmの世界最小径の人工血管の開発に成功し、ギネス世界記録に申請中である。ラット8匹の両大腿動脈に移植すると、16本中4本が1ヶ月で閉塞したが、残りは1年間開存を維持した。1ヶ月後には動脈血管壁が再生し、1年後も石灰化することなく動脈血管壁が維持された。また、リンパ管としての可能性も見出すことができた。

   ラット大腿動脈の両側に移植した16例のマイクロバイチューブの術後1年間のMRA経過観察

受賞など

今後の可能性、治療対象

リンパ浮腫治療用のバイパス用血管として、広島大学国際リンパ浮腫治療センター光嶋センター長、吉田助教が取り組む。
形成外科用の超小口径人工血管としても応用可能性がある。

管状組織体(バイオチューブ)

世界最長の組織工学人工血管を開発

ヤギの皮下において、長さ50cmの小口径人工血管(内径4.5mm)の開発に成功した。組織工学的に作製された人工血管で報告例がなく、世界最長である。ヤギ動物実験において、頸部での動脈バイパスならびに動静脈シャントの1ヵ月の開存に成功した。動物実験は開始したばかりであるが、1ヵ月で開存できたことで期待は大きい。

受賞など

  • ヨーロッパ血管外科学会2017年Top 9研究

今後の可能性、治療対象

天理よろづ相談所病院では透析シャント作製後の狭窄部のバイパスしか行っていない。長いバイオチューブができたことで、シャント自体を作製することが可能になる。人工血管に比べて、感染のリスクが低く、穿刺が容易である。組織修復されるため同一部位での繰り返し穿刺も生体血管と同様に可能と考えられる。
また、動脈バイパスヘの応用も期待され、重症下肢虚血患者に対するバイパス血管への応用を検討している。年間約1万人が切断している足の救済をめざして、横浜総合病院の東田創傷ケアセンター長と取り組む。

管状組織体(バイオチューブ)

iBTA組織の中で移植後の成長性をバイオチューブで初めて実証

ラットとイヌ動物実験において、移植後の成長を実証した。
生後4週のラット腹部大動脈に0.6mm径のバイオチューブを長さ3mmで移植し、血管形状の経過観察を7T MRIで行った。ラットの体格の成長に伴って生体血管が太く長くなるのにバイオチューブも追従した。移植3ヶ月には口径は約0.8mm(約1.3倍)に長さは約4mm(約1.4倍)となり、2ヶ月間の体重増加率約1.5倍に相当して成長していた。一方、ビーグル犬ではより長期の観察を行なっており、幼犬に移植した内径約2.5mmのバイオチューブは、1年後には約4mmとなり、生体血管とほぽ同径となった。またヤギでも成長に応じた血管径の拡径を認めており、IBTA組織が成長することは揺るぎない事実である。

受賞など

  • 小児循環器学会雑誌2016掲載
  • 小児外科2017掲載

今後の可能性、治療対象

小児用の人工血管は存在しない。バイオチューブは成長性を有していることから、体格の成長に合わせた繰り返しの手術が不要な世界初の人工血管になり得る。

管状組織体(バイオチューブ)

iBTA組織で初めて、バイオチューブで臨床研究を実施

透析患者2名に対して、シャント作製後の狭窄静脈のバイパス術を実施した。
2名の患者は1年半以上ほぼ3ヵ月に一度の割合で頻回に痛みを伴うバルーン拡張が必要であった。バイオチューブを移植後、2例中1例は7ヵ月後にバルーン拡張を必要としたが、拡張時に痛みを伴うことはなかった。また、もう1例は2年後も透析に支障無く経過している。

受賞など

今後の可能性、治療対象

本研究後にバイオチューブの処理の改良方法を開発しているため、成績の向上が期待できる。天理よろづ相談所病院の金子副院長が臨床研究に取り組む。

管状組織体(バイオチューブ)

冠動脈バイパスへの応用の可能性を実証

ヤギ動物実験において、冠動脈バイパスの可能性を示した。
バイオチューブで上行大動脈と冠動脈間をバイパスすることができ、2週間後の摘出まで開存を維持して生存した。

受賞など

未発表なため、今後に期待している。

今後の可能性、治療対象

冠動脈バイパス治療に使用可能な内径2,3mmの小口径人工血管は世界に存在しない。
数日の急性期実験であるが、約10cmを開存させることができた。今後長期の信頼性の獲得をめざしていく。
冠動脈バイパスに応用可能となれば画期的であり、是非とも実現させたい。

管状組織体(バイオチューブ)

神経再生誘導管としての可能性を実証

ラット動物実験において、切断した神経束の両端をバイオチューブで繋ぐと2週間で神経が接続された。神経再建治療として行われている「自家遊離神経移植」において必要とされる患者自身の健常部位の神経を採取する必要がない。

管状組織体(バイオチューブ)

気管、食道、小腸としての可能性を見出す

生分解性ステントと組み合わせてイヌの気管、食道、小腸へ移植した。
気管として用いるためには、強度を高める必要があり、バイオチューブと生分解性ステントを組み合わせたハイブリッド型が有効である。

受賞など

ヨーロッパ小児外科学会若手研究者賞候補

今後の可能性、治療対象

人工気管、人工食道、人工小腸は現在存在しない。バイオチューブで実現できる新たな治療法の例の一つである。

管状組織体(バイオチューブ)

バイオチューブの血管以外の実験例

膜状組織体(バイオシート)

気管として、気管軟骨の再生まで確認

先天性気管狭窄症に代表される気管・気管支の先天異常は時に極めて重篤な呼吸困難を呈し、しばしば死に至る。病変が広範囲であれば気道再建は極めて困難である。そこで埼玉医科大学小児外科の古村教授らと共同で、バイオシートを用いた気道再建を検討している。柔軟性と十分な強度を併せ持つバイオシートは気管へ強固に縫合固定できる。ウサギ気管の切開孔にパッチすると、4週間後にコラーゲンtype2を含む軟骨が再生した。本来自律再生しにくいとされる硝子軟骨である気管軟骨が再生できた。
また、大阪大学小児外科奥山教授らと共同でビーグル犬の気管切開孔ヘパッチ移植した。4週後には線毛円柱上皮層の再生が起こり、最大12ヶ月間の観察期間中全例が生存し、気管内腔を保つことができ、バイオシートは気管形成の足場として有用であると言える。

受賞など

  • Journal of Pediatric Surgery誌掲載

今後の可能性、治療対象

人工気管は現在存在しない。バイオチューブで実現できる新たな治療法の例の一つである。

膜状組織体(バイオシート)

食道、小腸としての可能性を実証

一期的直接吻合が困難なlong gap型先天性食道閉鎖症においては、しばしば胃管あるいは腸管などの代用臓器を用いた食道再建術が行われる。しかし小児の長期予後を考慮すれば、より生理的な再建が望ましい。そこでバイオシートを用いた食道再建の可能性について、大阪大学小児外科の奥山教授と共同で調べている。
ビーグル犬の頚部食道に欠損孔を作製し、バイオシートで食道形成を行った。縫合不全などの合併症は認めず、狭窄無く4例全て3ヵ月生存した。バイオシートの内腔面は重層扁平上皮に覆われ、外側面を食道固有筋組織が被膜した。さらに小腸へのパッチ移植においても同様に壁構造の再生を認めることができた。

受賞など

  • Journal of Pediatric Surgery誌掲載

今後の可能性、治療対象

人人工食道、小腸は現存存在しない。バイオチューブで実現できる新たな治療法の例の一つである。

膜状組織体(バイオシート)

腹壁、横隔膜の修復材として応用、ヘルニアの治療材料に

腫瘍や外傷、先天性などによって生じた欠損部の修復には人工素材や生体由来材料が用いられているが、拒絶反応や感染、炎症などのリスクが伴う。バイオシートをビーグル犬の腹壁欠損にパッチ移植すると、3ヶ月間破裂せず穿孔や腹腔内臓器の癒着はなかった。周囲組織からの細胞浸潤が起こり、筋肉様構造が構築され、正常腹壁と同等の強度を示した。ヘルニア治療にも有用であった。

膜状組織体(バイオシート)

膀胱壁修復材として応用、泌尿器系での再生も可能

近年ネコ尿管結石の外科適応症例が増加しており、尿管壁が肥厚し、内腔の狭窄・閉塞によって尿管部分切除となる場合がある。尿路再建方法として、尿管皮膚瘻や尿管膀胱瘻、尿管ステント設置が行われるが問題も多い。そこで東京大学動物医療センターの西村教授、藤田助教らと共同で、バイオシートが尿路に適応できるか検証を行った。ネコの膀胱壁欠損部へ自家移植すると、尿漏出などの合併症は無く、3ヶ月後には内腔側を移行上皮が内張した。NF200陽性の神経線維を認め、筋層の再生も示唆され機能的再建が期待できた。バイオシートは尿路へ適応できる可能性を見出した。

膜状組織体(バイオシート)

角膜として移植すると透明に

バイオシートは白濁しているため、ウサギ角膜へ移植すると不透明になる。しかし、移植期間と共に実質細胞が浸潤し、コラーゲンが角膜類似の均質な繊維状に変化して透明性が大幅に改善し、8週間後にはほぼ透明化した。角膜内に移植したバイオシートは角膜実質化する高い生体適合性を示した。代用角膜としての可能性を実証できた。

膜状組織体(バイオシート)

硬膜への応用

脳、脊髄の術後には様々な理由で硬膜がprimaryに縫合できず、再建を要することがしばしばある。その際、筋膜等の自己組織による再建は使用機会が限られ、また十分な大きさ、強度での採取が困難なことも多い。代用硬膜として、今までにも様々な人工硬膜が報告され、臨床応用されているが、自己組織で再生された人工硬膜の報告はない。生体内組織再生術により作製したシート状結合組織体(バイオシート)をウサギの硬膜へ移植し、1ヶ月後の肉眼的及び組織学的評価を行った。自己組織による硬膜再建は使用機会が限られ、人工硬膜による再建では組織定着性の問題が残る。生体組織で作成したバイオシートであれば、何度も繰り返し作製が可能で、使用状況に応じて大きさ、形を調節することができる。また自己組織であることから拒絶反応はなく、生着性はきわめて優れている。さらに長期間での観察は必要であるが、バイオシートは代用人工硬膜として、高い能力を有するものと考える。

膜状組織体(バイオシート)

子宮への応用

バイオシートの子宮再生の可能性を東京大学工学部の古川教授と共同で調べている。ラット子宮の欠損部にバイオシートを1ヶ月パッチするだけで、平滑筋細胞層を含む多層構造の子宮壁の再生を示し、 DNA量も生体組織に近づいた。子宮癌や先天的な子宮奇形·欠損などの治療法として期待される。

膜状組織体(バイオシート)

大動脈弁膜への応用

iBTAを用いた心臓弁膜の3次元構築を大分大学心臓血管外科と共同で進めている。通常重度の弁膜症に対しては人工弁を用いた弁置換術が行われている。一方、自己心膜を弁膜材として用いて大動脈弁再建術を行う手術は「尾崎法」として知られている。自己心膜は補強のために摘出後にグルタールアルデヒド処理が行われており、長期耐久性に不安がある。そこで自己心膜の代替えとしてバイオシートの可能性を検討している。円筒型の鋳型を皮下に埋め込むと、チューブ状の結合組織体が形成され、切り開くことでバイオシートが得られる。ヤギから作製したバイオシートの強度は、ヒト心膜の半分程度であったが、ヒト弁膜に比べると3倍以上であった。厚さ約0.3mmのバイオシートを弁葉形状に切り出し、同ヤギの大動脈弁膜として縫着した。移植直後の最大血流速度Vmaxは3m/s程度と軽度の弁狭窄状態であったが、移植期間と共に減少した。半年後にはVmaxは約半分に改善し、バイオシートは生体弁膜様にほぼ透明化した。移植前は線維芽細胞を含むコラーゲンが主成分であったが、表面は全面を血管内皮細胞が覆い、平滑筋細胞の浸潤とエラスチン層の形成が認められ、大動脈弁の3次元層構造が構築されつつあった。

弁様組織体(バイオバブル)

心臓弁への応用

iBTAを用いると4種類の3次元心臓弁様構造体(バイオバルブ)が構築できる。例えば弁付導管夕イプはヤギの肺動脈弁に置換し、年単位での機能維持を確認している。さらに今日欧米では主流となりつつある経カテーテル弁留置術用の拡張型バイオバルブも作製している。それらは大動脈弁や肺動脈弁としてオフポンプ下で留置され、1年半後には肺動脈弁の3次元層構造のほぼ完全な構築を認めた。

膜状組織体(バイオシート)

バイオシートでの実験例

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